コーヒーの成分|コーヒーの旨み?

この記事でわかること

コーヒーに含まれる「旨み」の成分と過抽出時に感じる「渋み、エグ味」の成分をまとめました。

目次

コーヒーの旨み成分

1. アミノ酸類(アラニン、グルタミン酸·アスパラギン酸など)

コーヒーには少量のグルタミン酸やアスパラギン酸が含まれ、これらが「旨み」の元になります。ただし、コーヒーは一般的に旨味成分が豊富な食品(昆布や味噌など)に比べてアミノ酸含有量が少ないため、旨味の主成分としての寄与度は低めです。

🔹特徴

  • 50~90℃で徐々に抽出される
  • 高温(90℃以上)では急速に溶け出す
  • 短時間(1~2分):アミノ酸量は少なめ
  • 長時間(3~5分以上):多く溶け出し、旨味や甘味が増す
  • 旨味成分として風味に貢献。特に グルタミン酸 は旨味が強い。
  • アラニン は甘味の要因となる。
  • 長時間の抽出でより多くのアミノ酸が溶け出し、複雑な味わいに。

2. 有機酸(クエン酸·リンゴ酸·コハク酸など)

クエン酸さわやかな酸味と旨みを付与(特に浅煎りのコーヒーに多い)。

リンゴ酸フルーティーでマイルドな酸味、旨みの要因に。

コハク酸ほのかな苦味とともに旨みを感じる成分(昆布にも含まれる)。

🔹特徴

  • 70~90℃で効果的に抽出される
  • 90℃以上になると一部の酸が分解し、風味が変わる
  • 短時間(1~2分):酸味が穏やか
  • 中程度(3~4分):程よい酸味とバランスの良い風味
  • 長時間(5分以上):酸味が強くなる
  • フルーティーな酸味を生む要因。
  • クエン酸 → 柑橘系の酸味
  • リンゴ酸 → さっぱりとした爽やかな酸味
  • 焙煎度が浅いほど酸味が残りやすい。

3. 糖類(オリゴ糖·多糖類)

コーヒー豆には多糖類やオリゴ糖が含まれ、甘みやコクを形成します。 焙煎によって一部がカラメル化し、甘味や香ばしさを増したように感じられます。

🔹特徴

  • 70~85℃で溶け出しやすい
  • 高温(90℃以上)ではキャラメル化し、風味が変わる
  • 短時間(1~2分):甘味が控えめ
  • 長時間(3~5分以上):甘味がしっかり感じられる
  • 軽い甘味やバランス感を与える。
  • 浅煎りのコーヒーでより多く残る。
  • 焙煎が進むとカラメル風味が強くなる。

4. ペプチド類·タンパク質分解物

焙煎時にタンパク質が分解され、一部が旨み成分として働くと言われています。これがコーヒーの「コク」や「まろやかさ」に寄与する結果となります。

🔹特徴

  • 80~95℃で効果的に抽出
  • 100℃以上の高温では分解が進む
  • 短時間(1~2分):抽出量は少なめ
  • 長時間(3~5分以上):豊かなコクやボディ感が増す
  • コクや厚みを与える要因。
  • 苦味の一部もペプチド由来。
  • 抽出時間が長いと濃厚な味わいに。

6. メイラード反応生成物(ピラジン類·フラノン類など)

焙煎時に糖とアミノ酸が反応して「メイラード反応」が起こり、旨みや香ばしさを作り出します。

ピラジン類焙煎香やコクを形成。

フラノン類カラメルのような甘い風味。

🔹特徴

  • 90℃以上の高温で多く抽出される
  • 長時間加熱で苦味成分も増加
  • 短時間(1~2分):軽いロースト感
  • 長時間(3~5分以上):濃厚なロースト香や苦味が増す
  • 焙煎時に生成される 香ばしさ複雑な風味 の要因。
  • メラノイジン:褐色化物質で、香ばしい香りと苦味を提供
  • ピラジン類:ナッツやチョコレートのような香り

5. 脂質(コーヒーオイル)

コーヒー豆には微量の油分(コーヒーオイル)が含まれ、口当たりのなめらかさやコクを生み出します。特にエスプレッソでは、クレマ(泡)の形成に関与し、風味に大きな影響を与えます。

コーヒーの旨みは、複数の成分の相乗効果によるものです。

アミノ酸·ペプチド類旨みのベース。

有機酸酸味とともに旨みを付与。

糖類·カラメル化物甘みとコクを増す。

コーヒーオイル口当たりを良くし、コクを強化。

焙煎によるメイラード反応生成物香ばしさや深みを追加。

これらが組み合わさることで、コーヒー特有の「旨み」や「コク」が生まれます。

成分最適な抽出温度溶け出す時間の目安特徴
アミノ酸類50~90℃1~5分旨味・甘味を提供
有機酸類70~90℃1~4分フルーティーな酸味
糖類70~85℃1~5分軽い甘味
ペプチド類80~95℃1~5分コクとボディ感
メイラード反応生成物90℃以上1~5分香ばしさ・苦味

🔹抽出のポイント

  • 酸味を楽しみたい → 短時間(1~2分)、浅煎り豆を使用
  • 甘味とコクを出したい → 中~長時間(3~5分)、中煎り豆
  • 香ばしさと苦味を求める → 高温(90℃以上)、長時間(5分以上)、深煎り豆

これらを理解することで、好みの風味を自在に調整できるようになります。とは言え、抽出器具や豆のポテンシャルにも大きく左右されます。これらを理解した上で経験を重ねることが大事です。

コーヒーのエグ味や渋みを感じる成分

1. クロロゲン酸類

クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、酸味や苦味、エグ味の原因となります 焙煎時に分解されるとキナ酸となり、強いエグ味を感じることがあります。

🔹特徴

  • 80〜90℃が最も溶け出しやすい。
  • 100℃の熱湯 では、短時間で多く溶け出すが、長時間加熱すると分解しやすい。
  • コーヒーでは 30秒〜2分 で多く抽出される。
  • 長時間(5分以上) の抽出では苦味が強くなる。

2. カフェー酸

クロロゲン酸が分解されることで生成される成分の一つ。 強い抗酸化作用を持つが、苦味や渋みの原因にもなります。

🔹特徴

  • 80〜100℃ で水に溶けやすい
  • 熱に比較的強く、高温でも分解しにくい
  • 1分程度で溶け始める
  • 3〜5分で多く抽出される
  • 10分以上の長時間抽出でも比較的安定

その他の成分

アルカロイド類(カフェイン)

カフェイン自体は苦味の要因ですが、高濃度ではエグ味を感じることがあります。

タンニン(クロロゲン酸の一種)

クロロゲン酸の中には、タンニンと似た作用を持つものがあり、渋みを引き起こします。

渋茶やワインの渋みと似た感覚をもたらします。

ポリフェノール類

クロロゲン酸の分解産物として生成されるカフェー酸フェルラ酸も、渋みの原因になります。

未熟豆や欠点豆の成分

未熟なコーヒー豆や発酵不良の豆には、タンニンやクロロゲン酸が多く含まれ、渋みを強く感じることがあります。

コーヒーの味わいは成分のバランスによって決まるため、焙煎·抽出方法を調整することで、エグ味や渋みを抑えた美味しいコーヒーを楽しめます。

生育環境によってクロロゲン酸やポリフェノールの含有量が変化することはある?

1. 標高(気温)

標高が高い(気温が低い)と、クロロゲン酸やポリフェノールの含有量が増える傾向があります。

標高の高い場所(涼しい気候)では、コーヒー豆がゆっくり成熟するため、ポリフェノール類が蓄積しやすくなります。

逆に、標高が低く(気温が高く)なると、クロロゲン酸の分解が進み、含有量が減る可能性があります。

2. 日照量

強い日光を浴びると、クロロゲン酸やポリフェノールが増える傾向があります。

これらの成分は紫外線ストレスに対する防御物質として生成されるため、日照が強い環境では含有量が増えます。

逆に、日照が少ないとポリフェノールの生成が抑えられ、含有量が減少する可能性があります。

3. 土壌の栄養状態

窒素肥料が多いとクロロゲン酸の含有量が減ることがあります

窒素が豊富な土壌ではアミノ酸やタンパク質の生成が促進されるため、ポリフェノール系の二次代謝産物の合成が抑えられることがあります。

逆に、栄養が不足しているとストレス耐性を高めるためにポリフェノールの合成が増えることがあります。

4. 降水量·水分ストレス

適度な乾燥ストレスはクロロゲン酸やポリフェノールの増加につながる可能性があります。

水不足の環境では、植物はストレス耐性を高めるためにポリフェノール類を増産することがあります。

逆に、過剰な降水量や湿潤環境では、ポリフェノールの生成が抑えられ、含有量が減る可能性があります。

5. コーヒー品種

アラビカ種とロブスタ種では、ロブスタ種のほうがクロロゲン酸含有量が多い傾向があります。

そのため、品種の違いによっても含有量が変わります。

コーヒーの品質は年々向上しています。しかしコーヒーがコーヒーである以上過抽出という領域は存在します。
まとめましたようにネガティブな要素はおおよそ70℃以上で1分から溶け始めます。蒸らしの湯量を少なくするのは蒸らし時の温度をあげすぎないようにするため、つまりネガティブな要素の抽出を遅らせるためです。対してポジティブな要素は若干早く溶け始めることがわかると思います。

抽出の不安定性は面白さのひとつではあります。が、コーヒーの成分を体感し、抽出成分の傾向を経験として積めば大きな失敗はしなくなると思います。

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