「美味しい」アイスコーヒーを作るためには濃度を上げる必要があります。
そして急冷をしないとコーヒーは濁ります。
濃度を上げる
濃度を上げるシンプルな方法は使用する豆の量を増やすことです。コーヒー1杯のコーヒー豆の比率を上げるということなので、お湯の量を減らすと捉えていただいても構いません。いつも200mlのコーヒーを提供してきた私のアイスコーヒーのレシピです。
- サーバーに氷をたっぷり入れます。
- いつも(HOT)が15gなら16.5g使用します。→①
- お湯を30cc注ぎます。
- 45秒待ちます。→②
- 90cc注ぎ、落とし切ります。→③
①15gから16.5gは1割増ですがこれは好みなのでお好きな濃度を見つけてください。
②注湯が少ないのでここで時間の帳尻合わせをします。もし抽出に3分以上かかるようなら粒度を調節してみてください。
③タッタッタっと最後まで落とし切ります。この時、水の表面張力がコーヒーに働き浸透圧が高くなります。少ない水分でより多くの成分を抽出できます。落とし切りの時間は2分~2分30秒が理想です。
サーバー内の氷はほとんど溶けていますのでグラスに新しい氷を入れサーバー内のコーヒーを注いで完成です。
なぜ濃度を上げるのか
これはヒトの味覚の性質によります。つまり人は冷たいと味を感じにくくなるということです。アイスクリームには他のスイーツに比べ多量の砂糖が使われていますが、それはそうでもしないとヒトが味を感じられないからです。
より深掘りしますと、味を感じるということは口に入った分子が感覚器である舌の味蕾に触れるということです。分子は温かい状態では活発に動いていますが、冷たい状態では動きが鈍くなります。冷たい方が味蕾への刺激が少なく味を感知しづらいということです。また、冷たい食べ物は温かい物に比べ香りが立ちにくいです。「美味しい」とは官能的でその構成は複雑です。香りも大きな役割を担っています。その要素が著しく減少するので濃度をあげ美味しいのためにバランスを取る必要があります。
なぜ急冷する必要があるのか
私のレシピではサーバーに氷を仕掛け抽出液が即座に冷却する仕組みですが、目的の量を抽出し、サーバーごとあるいはシェイカーなどに移し流水や氷水で容器ごと冷やすやり方もあります。どちらが優れているということはありません。単にスタイルの違いです。

自然冷却するとコーヒーは濁る
抽出された熱い状態では、コーヒーに含まれる微量の油脂やその他の成分(例えばコーヒー豆由来の脂質やタンパク質)は液体中に均一に分散して溶けています。しかし、温度が下がるとこれらの成分の溶解度が低下し、微小な粒子(エマルジョンや微乳化状態)として析出します。この粒子が光を散乱させるため、コーヒーは濁ったように見えるのです。また、温度変化に伴い、コーヒー中の成分同士が再結合や凝集を起こし、さらに微粒子が大きな粒子となることで、より顕著に濁りが現れる場合もあります。つまり、温度変化によって元々溶けていた成分が分離し、液体中で光を散乱させる結果、色が濁って見えるというわけです。
急冷すると透き通る
激な温度低下では、油脂やその他の成分が再結合して大きな粒子になる前に温度が下がるため、粒子が十分に成長せず、光散乱が起こりにくくなります。温度変化に伴う成分の再結合が起こるためにはある程度の時間が必要ですが、急冷によりその時間が与えられないため、液体中に元々溶けていた成分がそのまま保持され、結果として透き通った見た目になります。
味の違い
雑な言い方をすれば急冷するとキレが出ます。自然冷却では先に述べたように液中で成分の変質を許してしまいます。特にコーヒーは揮発成分が多く含まれているので時間経過は風味に大きな影響を与えます。
水出しコーヒー
ゆっくりと時間をかけ抽出する水出しコーヒーは独特な抽出方法です。浸透圧も最小限で熱エネルギーは無いに等しく毛細管現象のみゆっくりと進行させ抽出を行います。コーヒーの成分の多くは80℃前後で溶け始めます。その成分を10℃以下で6~8時間かけて抽出するのです。しかし過抽出が起きないということではなく、適切な時間をオーバーするとエグ味や渋味を感じることが出来ます。水出しコーヒー用の抽出器具は今は多く販売されています。何が優れているということはないのでお好きなもので試してみてください。

あとがき
ホットコーヒーとアイスコーヒー。優劣はなく全く別物の料理と言えます。いい豆だからアイスにするのは勿体無い。という意見もたまに耳にしますがアイスでなければ感じられないモノもあったりします。濃度を上げる必要があると述べましたがむしろ濃度を落としスッキリとお茶のような飲み方も特に浅煎りは心地よく感じます。濃度を上げる、という主張は商業的だなと今少し反省しています。

