シロップの選び方 メーカーごとの違いはこれ!

(もしかしたら)既製のシロップにネガティブな印象を持つかたもいらっしゃるのではないでしょうか。「人工的で甘すぎる」とのイメージを持つ人もいるかもしれませんが、これは使い手の腕次第です。世界的なメーカーのシロップは、誇り高い歴史と品質へのこだわりを持って作られています。いまも新たなフレーバーが生み出され続けており、シロップはドリンクだけでなく料理にも必要な要素として進化し続けています。

目次

そもそもシロップとは


シロップは、主に糖と水を混ぜ合わせた甘味液で、飲料やデザート、調理用など多用途で使われる「食品」です。その種類や用途によって糖度や特性が異なり、保存性や風味が調整されています。

種類と糖度

1. 通常のシロップ(サラサラしている)

  • 糖度:5060度前後
    一般的なフレーバーシロップやパンケーキシロップなどは、糖度50~60度程度が多く、適度な甘さと流動性を持っています。
    家庭で簡単に作れるシンプルシロップ(水と砂糖を1:1で混ぜたもの)も、糖度が約50度程度で、この範囲に入ります。

2. 濃厚シロップ(粘性が強い)

  • 糖度:7080
    濃縮タイプのシロップは、砂糖の割合が高く保存性に優れています。デザートやカクテルに使われ、少量でしっかりした甘さを加えることができます。

3. 特殊なシロップ

  • 果物シロップ(例:かき氷用のシロップ)
    • 糖度:45~55度程度
    • 果汁や香料を加えて風味を強調したタイプ。
  • 濃縮還元フルーツシロップ
    • 糖度:65~70度以上
    • 濃縮された果物の風味と甘さが特徴で、ジュースやスムージーなどに使われます。

4. 医療用・薬用シロップ

  • 糖度:60~80度
    咳止めや薬用シロップは、保存性を高めるため糖度が高く設定されています。また、薬効成分の苦味を緩和する役割も果たします。

シロップの目的


シロップの最大の目的は「保存性の向上」です。糖度が高い食品は腐りにくく、賞味期限が長くなる特性があります。食品中の水の分子と糖が結び付くことによって、腐敗の原因となる微生物が使える「自由水」という部分が少なくなります。微生物が使える自由水が少ない=糖度が高い、ということで腐りにくくなるわけです。


糖度と賞味期限の関係

日本ジャム工業組合によるジャムの賞味期限基準が参考になります。

  • 高糖度(65%以上):2年以内
  • 中糖度(5565%:2年以内
  • 低糖度(4055%:18ヶ月以内
  • 紙容器の場合:1年以内

シロップも同様に糖度や容器によって保存期間が異なり、瓶の使用が一般的です。(消毒と注意点)
もちろんメーカーが明記している賞味期限を厳守するのは絶対です。

主要メーカーの特徴と期限

MONIN(モナン)

  • 賞味期限:製造日から36ヶ月(開封後は6ヶ月)
  • 特徴:ベルギー発祥。幅広いフレーバーを提供し、世界中のカフェやレストランで使用されている。

1883 MAISON ROUTIN(メゾンルータン)

  • 賞味期限:製造日から36ヶ月(輸入の関係上短縮される場合あり)
  • 特徴:フランス産の高品質シロップ。サトウキビや天然成分にこだわり、フルーツ系のジューシーさが魅力。


Da Vinci(ダヴィンチ)

  • 賞味期限:製造日から24ヶ月
  • 特徴:アメリカの老舗ブランドで、コーヒーカルチャーと共に成長した。エスプレッソとの相性が◎。


Torani(トラーニ)

  • 賞味期限:製造後15~36ヶ月(輸入の関係上短縮される場合あり)
  • 特徴:アメリカの伝統を受け継ぐイタリアンシロップ。フレーバーラテの開発者として有名。


Giffard(ジファール)

  • 賞味期限:製造日から36ヶ月
  • 特徴:フランス・アンジェのメーカー。甜菜糖を使用し、フレーバーの豊かさとコクが特徴。

メーカーの歴史とこだわり


私自身たくさんのメーカーとシロップに触れてきましたが種類の豊富さには毎度息を飲みます。メーカーごとの個性も甚だしく、かといって例えばフルーツ系ならここが一番というよりはストロベリーの酸味を効かせたいならこれ、苺ミルクのような懐かしさを演出したいならこれ、というように目的によってベストな選択は変わってくるのです。価格が高ければ良いというものでもないし安ければだめということは決してありません。

  • MONIN(モナン)

モナン社の創業は1912年。日本は明治45年で大正元年の時代です。ベルギーの古都ブルージュ。代々ボルドーでワイン商を営む家に生まれた初代ジョルジュ・モナンは、ノンアルコールシロップとリキュールビジネスに目をつけ、モナン社を設立しました。創業当時は荷馬車1台で、主にワインとスピリッツを売り歩いていたそうです。しかしたとえ荷馬車での販売だとしても、ジョルジュはボトルごとに個別にラベルを貼り、きちんと密封し、シルクで包装するなど、常に最高の状態で販売を行っていた。そのことが現在に至るまでモナン社の哲学「クオリティーへの情熱」に繋がっているのです。

  • 1883 MAISON ROUTIN (メゾンルータン)

1883年 フランスのシャンベリーで創業。日本は明治時代。薬草師であったフィリバート・ルータンの構想から始まり、現在もフランスの自社工場で全て生産しています。精製された砂糖ではなくサトウキビを使用、保存料不使用など天然成分にこだわっており、特にフルーツ系フレーバーのジューシーさは驚かされます。1883年の創業以来アロマの研究を続けること130年、その代々受け継がれてきた作り手の大胆さと完璧を追い求める熱意によって、1883ブランドはフランスでも確固たる地位を築いているのです。

  • Da Vinci (ダヴィンチ)

1989年アメリカ シアトルで創業された老舗ブランド。ヨーロッパで、旧ロシア皇室やオーストリア皇帝にチョコレートを納めてきた歴史を持つ一族がアメリカにわたった”Sweetness”の名門。ハワイ産のキビ糖のみを使用し1996年には、シロップとして最高の品質の証しExcellence賞を受賞しています。シアトルのコーヒーカルチャーと共に世界中のバリスタや、バーテンダー、パティシエから高い支持を得ており、シロップだけでなくソースも高品質でエスプレッソとの相性もかなり良いのです。

  • Torani (トラーニ)

1925年アメリカ サンフランシスコで創業。イタリアから伝わる伝統の味を原点にイタリアンシロップを開発。1980年代、フレーバーラテを初めて世の中に考案しエスプレッソブームを牽引してきたとのこと。全て自然素材を生かし人工的な甘味料不使用。トラーニのソースも個人的にはかなり頼ってきました。

  • Giffard (ジファール)

1885年にフランス・アンジェで創業したリキュール・メーカー、ジファール。130年以上に渡り、メイド・イン・フランスであることにこだわり、素材選びから製造まで一貫して行うクオリティーの高いリキュール、シロップを作り続けています。「味こそが最高の素材」。可能な限り地元の資源を活用し、同じ志を持つ農家と継続的に契約することで、持続可能な原材料調達に努めるなどエシカルな企業姿勢を持っています。リキュールが主なメーカーですがシロップの原材料は甜菜糖にこだわるなどしフレーバーだけでなくしっかりとしたコクのある味わいが特徴です。


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