コンビニコーヒーの海外事情

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いつから始まったのか

気がつけば当たり前どころか無くてはならない、多くの人の生活を支える存在となったコンビニコーヒー。本格的に日本国内で広まったのは2013年のセブンカフェが印象的でしょう。しかし、パイオニアとなったのは実は2008年のローソンが導入した「MACHI café」です。実は、セブンイレブンは1980年代からコンビニでのコーヒーサービスに取り組んでいました。当初はオペレーションの非効率さや品質面の課題を克服できずに試行錯誤を繰り返しましたが、2000年代後半からの研究開発や市場分析を経て、2013年の「セブンカフェ」誕生につながる基盤を築きました。この試行錯誤の歴史が現在の成功の土台となっています。

現在では、コンビニコーヒーは日常の光景となり、その普及を支えるのはコーヒーマシンの驚くべき技術進歩です。迅速な抽出に、ワンタッチで好みの濃度を選べ、アイスコーヒーやカフェラテも提供可能で、洗浄作業もほぼ自動化され、従業員の負担が大幅に軽減されています。セミオートのエスプレッソマシンの場合、洗浄に最低15分が必要で人手がかかります。エスプレッソマシンは本来洗浄工程でも専門知識が必要なのです。このような技術進化の裏にはなんとAIの活用もあり、顧客の利用データを分析し、メニューの改良や抽出条件の最適化に役立てられています。このような技術の塊のコンビニコーヒーですが実は海外でも展開されています。

海外展開

(1) アジア地域

アジアでは、日本のコンビニチェーンが高品質なコーヒーサービスを現地化しつつ展開しています。

  • 台湾
    • 日本のセブンイレブンファミリーマートが進出。日本同様にコーヒーマシンを設置しています。
    • 豆や焙煎方法を現地の嗜好に合わせ、やや甘めのコーヒーや大サイズのカップが人気です。
    • 現地限定メニューとして、黒糖入りラテやタピオカコーヒーが提供されることもあります。
  • 韓国
    • 韓国のコンビニでは、セブンイレブンCU(韓国特有のチェーン)で日本式のセルフコーヒーが普及しています。
    • 韓国のコーヒー消費量は非常に多く、カフェ文化が浸透しているため、カフェクオリティに近い味わいを求める顧客が多いです。
    • コンビニコーヒーは「安価で高品質」として学生やオフィスワーカーに人気があります。
  • タイ・インドネシア・フィリピン
    • 暑い気候を考慮し、アイスコーヒーが主力メニュー。
    • 砂糖やミルクが予め入った甘いスタイルが好まれる傾向があり、甘党向けの商品ラインアップが豊富。
    • 日本の技術を基盤とした自動マシンが現地生産され、コストダウンが図られています。

(2) 北米

北米では、日本のセブンイレブンが長年にわたって展開しており、現地に合わせたコーヒーサービスが提供されています。

  • セルフサービス形式
    • 日本のような完全自動の抽出システムではなく、セルフサービスでカップに注ぐスタイルが主流です。
    • 顧客が自分で砂糖、クリーム、フレーバーシロップなどを加えることで、好みに合わせたカスタマイズが可能。
  • サイズの多様性
    • アメリカ特有の大きなカップサイズ(「ラージ」や「エクストララージ」)が標準で、1杯の量が多いのが特徴。
  • プレミアムコーヒーの提供
    • 高品質なアラビカ豆を使用した「プレミアムブレンド」や、「オーガニック」「レインフォレスト認証」などの環境配慮型商品も展開。

(3) ヨーロッパ

ヨーロッパでは、コンビニエンスストアの業態そのものが北米やアジアほど発展していないため、展開が限定的ですが、以下の特徴があります:

  • イタリア・フランス・スペイン
    • コーヒー文化が強い地域では、現地のバリスタコーヒーと競争する必要があるため、品質重視の戦略が採られています。
    • エスプレッソを中心としたメニューが主流であり、ドリップコーヒーの需要は限定的。
  • 北欧
    • 環境意識が高いため、フェアトレードやオーガニックの豆を使用したコーヒーマシンが人気。
    • デンマークやスウェーデンでは、カフェと比較して手頃な価格のコンビニコーヒーが支持されています。

(4) 中東

中東では、コーヒー文化が深く根付いているため、コンビニコーヒー市場の可能性が注目されています。

  • 甘いフレーバーやスパイスの導入
    • カルダモン風味のコーヒーや甘みの強いラテなど、現地の味覚に合わせた商品が導入されています。
  • 24時間営業と相性が良い
    • 中東では深夜にも人々が活動することが多く、コンビニの24時間営業とともにコーヒーが提供されるスタイルが受け入れられています。

(5) オセアニア

オーストラリアやニュージーランドではカフェ文化が非常に強いため、コンビニのコーヒーマシンはカフェとの差別化を図る努力が見られます。

  • 競争力のある価格
    • 高品質のカフェラテやフラットホワイトを低価格($1~2程度)で提供することで、顧客を引きつけています。
  • 地元豆の採用
    • 地域で生産された豆を使うことで、新鮮さと地元支持をアピールしています。

これからのコンビニコーヒー

将来は、さらなる個別カスタマイズが可能になる「パーソナライズ機能」や、定額で毎日コーヒーを楽しめるサブスクリプションサービスの拡大が期待されます。また、無人店舗や完全ロボット型店舗での24時間利用可能な高機能マシンの普及も進むでしょう。

バリスタによる一杯、自宅で淹れるコーヒー、そして手軽なコンビニコーヒー。これらはすべて異なる魅力を持ちながら、消費者の多様なニーズに応えています。このような豊かな選択肢があるこの時代は、生産者はもちろん、技術者、そして店舗運営者の努力の賜物であり、私たちの生活をより豊かにしてくれています。

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