コーヒー豆を冷凍保存するとどうなる?メリット・デメリットを解説

この記事でわかること

よくコーヒー豆は冷凍で保管しましょう、という声を聞きますが果たして最適解でしょうか?コーヒー豆は焙煎後着々と変化していきます。常温、冷蔵、冷凍保存のメリット、デメリット(注意点)をあげていこうと思います。

目次

コーヒー豆は冷凍保存べきか?

コーヒー豆は焙煎後からガスを放出し続け絶え間なく変化しています。劣化とも言えるのですが正しくはエイジングと呼び、ガスを落ち着かせ、抽出するのに最適な状態を待ちます。ではどのような状態が望ましいのか。メリット、デメリットふまえて考えていきましょう。

常温保存

メリットデメリット
・抽出する準備状態としては最適
・エイジングを妨げることなく進められる
・長期保存には向かない
・室温変化の影響をもろに受ける

カフェなど冷蔵保存をしているところは少ないと思いますが、それは焙煎後から劣化が始まるまでに使い切ってしますからです。オペレーションの観点からも冷蔵庫、または冷凍庫を開け閉めする頻度が少なくて済みます。

冷蔵保存

メリットデメリット
・抽出する準備状態としても特に問題はない
・油質の酸化を遅らせられる
・結露がつきやすい環境なのでカビ発生の原因となり得る
・冷蔵庫の開け閉めの度に激しい温度変化が起こる
・結露防止のためには真空状態にしておく必要がある

冷凍保存

メリットデメリット
・長期保存が可能
・油質の酸化、ガス放出をほぼ止められる
・長期保存が可能
・結露凍結防止のために真空状態にする必要がある
・抽出の準備として復温する必要がある

解説

ガスの放出

焙煎後のコーヒー豆からは炭酸ガス(二酸化炭素)が放出され続けています。挽いたコーヒーにお湯を当てるとブワッと膨らみますがあれはコーヒーの繊維中のガスポケットに熱と水分が加わり置換が起こっている現象です。豆が挽かれていない状態であってもガスは出続けているのです。コーヒー豆の入った袋がパンパンになっていたり、コーヒー豆の袋に穴が空いているのをご存知でしょうか?抽出には(焙煎によりますが)最適な時期があります。焙煎後〇〇日のようにちょうど良いガスの抜け具合があるのです。これをエイジングと呼びますが最適なエイジングはコーヒー豆の個性を最大限抽出するためには必要な工程です。エイジングの最適日は購入元のコーヒー屋さんに聞いてみてください。必ず教えてくれます。

冷凍または冷蔵で保存するタイミングもエイジングの最適日を待ってから行うと良いです。焙煎直後のコーヒー豆はまだ不完全な状態であるという認識で差し支えないでしょう。

※たまに焙煎直後のコーヒーを提供しているお店もありますが、それはそれで、そのお店の主張なので否定するつもりはありません。それも楽しみ方のひとつです。

油質の酸化

コーヒーにはコーヒーオイルと呼ばれる油分が含まれています。深煎りのコーヒー豆がテカテカしているのは油分が焙煎によって表面に浮かんできている状態です。オリーブオイルがそうであるように天然の植物性油分は酸化、つまり劣化していきます。劣化は風味を損なったり劣化が進みすぎるとえぐみの原因になったりします。

香り

特に冷蔵庫の保存ですが、コーヒー豆はガスを放出していると同時に周りの空気を吸収します。ガスポケットから二酸化炭素が移動するのでそのかわりに空気を取り込もうとします。冷蔵庫のような箱内で保管する場合はしっかりと密閉、真空状態にしておかないと他の食材の匂いを吸収してしまいます。

常温での保管は長期にわたると、香り成分は揮発していきます。

冷凍状態からの抽出

コーヒー豆は、焙煎によってほとんどの水分が失われていますが、焙煎度合いによっては2~5%程度の水分がまだ残っています。この水分は冷凍すると凍結し、もう一つ重要な成分である油分も同様に凍ります。コーヒー豆には8~16%もの油分が含まれていると言われています。これらの凍結がコーヒーの抽出にどのような影響を与えるのか考えてみましょう。多くの人は「コーヒーを淹れる際には熱湯を使用するため、水分や油分が凍っていても問題ないのでは」と思うかもしれません。しかし、コーヒーの抽出は、わずかな時間の間に非常に繊細な化学反応が起きる過程であり、その瞬間瞬間が味を決定づける重要なプロセスとなります。

たとえば、蒸らしの工程では、豆15gに対して20~30cc程度のお湯を注ぎます。この段階で、豆が冷凍庫から出したばかりの状態、つまり氷点下に近い温度である場合と、室温に戻した常温の状態である場合とでは、抽出の結果に明らかな違いが生じるのは至って自然なことです。蒸らしは、豆が持つ味や香りを最大限に引き出し、その後の本抽出を円滑に進めるための極めて重要な工程です。この工程が不十分であると、コーヒーの全体的なバランスが崩れ、風味が劣化する可能性があります。ゆえに、冷凍状態から急にお湯をかけると、豆の温度変化が急激であるため、内部の油分や水分の動きが不均一になる恐れがあります。その結果、不完全な抽出結果となってしまうのです。


そのため、冷凍保存したコーヒー豆を使用する場合は、「復温」が必要な工程となるのです。望ましい方法は常温で自然に温度を上げることです。このプロセスを行うことで、豆内部の水分や油分が均一な状態に戻り、抽出時に熱湯と接触してもスムーズに反応するようになります。

このように、冷凍や冷蔵による保存は利便性が確かにありますが、同時に注意点もあります。一見乾燥しきっているコーヒー豆ですが他の食材と同じだと思えば不思議な点も薄れると思います。

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