1.ドリッパー選び

まず選ぶべきは抽出器具であるドリッパーです。ドリッパーにより水の流れが変わるので抽出結果に大きな影響を与えます。ドリッパーは大きく2種類に分かれます。円錐型台形型です。
初心者、という言い方が正しいのかは微妙ですが、安定した抽出結果を得たいのなら台形型がおすすめです。以下にそれぞれの製品の特徴を述べていきます。おすすめ順です。

目次

台形型

ハンドドリップには注ぎ手による技術がよく反映されます。台形型は円錐型に比べ注ぎ手の影響を受けにくい性質があります。どういうことかと言うとドリッパー内の水の流れです。上から注がれる水は円錐型では垂直に近い水流となります。台形型は底部の穴が1つだったり3つだったりします。なので底まで辿り着いた水は、穴にたどり着くまで一旦リバウンドし彷徨うことになります。そうするとコーヒーの粉により多く触れ抽出されやすい状態が形成されます。

カリタ ウェーブドリッパー

多くのカフェでも採用されているドリッパーです。ペーパーが波打っておりドリッパー自体は3つ穴が空いています。ドリッパーとペーパーの接地面積を極端に減らすことによってドリッパー内での水の滞りを防ぎます。さらに平な底面は注ぎ手の不安定さをカバーしてくれます。そうするとドリッパーのどの地点からでもおよそ均一にドリッパー内に水が流れ安定した抽出結果となるのです。
ステンレス製、樹脂製、銅製とありますが抽出結果にはそこまで大きな影響は与えません。
そもそもが誰でも安定した抽出が出来る、というコンセプトのもと開発されているので私は必ずこれを勧めます。
ただし、注ぎ手の影響を受けにくいということはデメリットにもなり得ます。こんな味にしたいと思ってもなかなか狙い通りの抽出結果が得られにくいという側面も持ちます。ただそういったエゴが出てくれば円錐型に進むタイミングかもしれません。カリタウェーブドリッパーを使った抽出レシピも数多く存在しますが味の振れ幅はそこまで大きいとは言えないと思います。

その他の台形型ドリッパー

その他の台形型ドリッパーは100円ショップや、かのブルーボトルからも販売されています。注目するべきは穴の大きさと個数です。穴の総合的な面積が大きいほど水が早く落ちます。前述した通り注がれた水は一旦は彷徨いますが穴の総合的な面積により落ちる速度に違いがでます。どう使い分けるかですが、穴の総合面積が大きいほど一度にたくさんの量を抽出するのに向いています。
例えばマグカップ1杯分200cc抽出するのに3分かけるとして、倍の400cc抽出する時に6分かけていいわけではありません。間違いなく過抽出となります。ドリッパーの穴の総合面積が大きければ大きいほど、例えば3分で400ccに到達しやすくなります。逆にマグカップ1杯分の200ccしか抽出しないのに水の抜けが良過ぎると注ぐタイミングに少し注意が必要となってきます。

台形型ドリッパーはつまりあまり気を使わなくてもしっかりとした抽出結果を得やすい抽出器具です。しかしハンドドリップの楽しさというのは十分に楽しめます。

円錐型

先述しましたがハンドドリップは注ぎ手による技術の影響がよく反映されます。注ぎ手の技術とは一定の速度で注ぐこと、しっかりと円を描き対流をコントロール出来ること、注ぎ口の高さを状況によって一定の速度を保ったままコントロールできることなど、つまりは注ぐ水を意のままにコントロールできる技術です。さらにはドリッパー内で起きている現象をより正確に推察できる経験値も欠かせません。これらが前提条件となります。円錐型はその結果がそのまま味に反映されます。
これが最初のドリッパーとしておすすめ出来ない理由です。抽出の楽しみは台形型と等しく楽しめますが、抽出結果として未抽出あるいは過抽出の結果を招きやすいです。するとどうでしょう。「やっぱりプロじゃないと美味しく淹れられない」と思ってしまう可能性が出てきます。高いモチベーション、つまりたくさん失敗する覚悟があれば別です。「こうすればこうなる」をより多く経験することが何よりも大事です。

ORIGAMI 

ハリオV60用ペーパー、カリタウェーブドリッパーのどちらも使用できます。円錐型の中では比較的安定した抽出結果を得やすいです。円錐型のデメリットとして抽出中にコーヒーの粉がドリッパー下部に詰まりやすく、そうなると過抽出を招く可能性がぐっと高くなります。その詰まりを分散させ防いでいる構造がこのORIGAMIのトゲトゲです。

ハリオV60

おそらく最もメジャーなドリッパーではないでしょうか。特徴的なリブに大きな一つ穴。そして美しい円錐型のフォルム。私個人も何年も使っている素晴らしいドリッパーです。クリアにしたい、コクを出したい、香りを強調したい。どんな要望にも応えてくれます。未だに多くのレシピが生み出されており驚くほど味わいに差が出ます。良くも悪くも同じ味を再現することが困難なので飽きのこない道具です。

コーノ 名門

V60のようなリブがドリッパー下部に少しだけついており穴も小さいです。コーヒーの粉が詰まりやすい構造になっているので難しい抽出器具と言えます。慣れると独特のコク、重みを味わいに持たせることができます。

CAFEC フラワードリッパー

最後にフラワードリッパーです。台形型の「オーバル」円錐型のDEEP27、DEEP45、スタンダートタイプと展開されています。形状による抽出結果の差は上記に沿ったものとなります。特徴的な溝は詰まりを分散させ過抽出を防ぐ効果と、ある程度詰まりを誘発し抽出を促進させる2つの側面を持ちます。結果どういうことかというとまろやかな味わいを作りやすいです。

ドリッパーの材質について

樹脂製、ステンレス、銅製、ガラス製など様々な材質で作られており価格もそれぞれ大きく異なります。これは抽出中の温度に影響を与えます。結論からいうと樹脂製がもっともおすすめです。実は樹脂製の保温力は驚くほど高く、余熱無しでも十分な温度を得られます。銅、ガラスは放熱製が高く冷めやすいです。冬場や室温の高くない環境下では十分な余熱が必要となります。必ずしないといけない訳ではないですが。

あとがき

ドリッパーを選択する際は、あなたがどのようなコーヒーライフを求めているか一度考えてみてはいかがでしょうか。一度に2人分毎朝入れたい時は、台形2つ穴以上、ウェーブドリッパーの大きいサイズなど。一人分、これからコーヒーとしっかり向き合っていきたい方は円錐型。樹脂製のドリッパーであれば比較的安価で販売されていますので、台形で慣れたら円錐という選択も素晴らしいです。

それと、クレバードリッパー、スイッチドリッパーには触れませんでした。ハンドドリップは「透過式」と呼ばれる抽出方法です。もうひとつ「浸漬式」という抽出方法があります。フレンチプレスがそれです。ハンドドリップという行為はドリッパー上部のコーヒーの状態を見つめ思うタイミングで注ぐという行為を繰り返す儀式にも似た性質を持っていると考えています。その集中のさ中こそハンドドリップの楽しさの本質ではないでしょうか。クレバードリッパーもスイッチドリッパーもハイブリットという浸漬式状態と透過式状態を繰り返す方法もありますが、さすがにイレギュラーです。

コーヒーの抽出にもレシピというものがあります。何秒で何cc注ぐというものです。参考にし色々と試すことは経験を積む上でとても大事です。しかし特に円錐型は詰まりやすい構造と述べました。これは豆のコンディションに大きく左右されます。浅煎りかつウォッシュドという製法であれば比較的詰まりやすいです。レシピ通りに注いでいるのに豆が詰まって時間がかかり過ぎる、ということはよく起こります。抽出中の状況を見極め適切かつ柔軟に対応していくことが大事だということは知っておいてください。

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