2.スケール、温度計、ケトルの必要性

ハンドドリップをするにあたりドリッパー以外のアイテムはどこまで揃える必要があるのでしょうか。スケール(計り)をとっても年々付加される機能が増えているように思えます。あれば便利、と必要の判断を誤ればいわゆるオーバースペックになります。樹脂製のドリッパーと比べると安価とも言えない価格なので慎重に選びたいところです。

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スケール

スケールが必要な理由

そもそも何故スケールが必要なのでしょう。コーヒーやドリッパーを買うとよくメモリ付きのスプーン(メジャースプーン)が付いてきます。いつも同じ豆を使うのであればメジャースプーンこのくらいとお湯このくらいの経験で美味しく飲んでいただけているのなら問題はありません。が、コーヒー用電子スケールの存在理由はコーヒー豆の性質にあります。コーヒー豆は深煎りであればあるほど体積が大きくなります。浅煎りほど小振りなのです。つまり同じメジャースプーン1杯でも深煎りと浅煎りでは重量が異なります。豆を挽くと粉状になり体積差は縮まりますが、厳密に言うとそれでも深煎りの方が体積は大きいです。さらに産地や豆の品種にもよって豆の密度は異なり同じ堆積でも重量に差が出ます。抽出は何gに対して何g(=cc)の水を使うという考え方がベースになっていますのでgで表します。

コーヒー用スケールの特徴としてレスポンス(反応)の早さと、タイマー機能付き、この2点が挙げられます。レスポンスの速さとは、計量から表示されるまでの早です。例えば30cc注ぎたい時、表示が30ccになった時点で抽水を止めても結果30cc以上になってしまう事は皆さんでも経験としてご存知だと思います。そこの誤差を限りなく縮めるため、レスポンスの早さに価値が置かれているのです。
次にタイマー機能です。抽出という現象は時間と相関関係にあります。スマホのタイマーを使っても何も問題はありません。タイマー機能が必要というより時間を計るという事が抽出においては必要なのです。

スケールの種類

高価格帯、ハイエンドモデルになると計測結果をアプリで管理したり、0.01gまで計れたりしますが、それらの機能は主にエスプレッソ用です。ハンドドリップは2~3分程度の時間をかけて行いますがエスプレッソは30秒前後です。ざっくりと6倍速で事が進む訳ですからより精密な測定器が必要になります。ハンドドリップにおいてはそれなりのレスポンス力とタイマー機能が備わっていれば十分です。以下おすすめ順です。

エレコム ドリップスケール

アトラス コーヒースケール

この辺りの価格帯は特に大きな差はありません。デザインで選びましょう。

タイムモア ドリップスケール Black Mirror basic

個人的に長年最も愛用しているスケールです。日本で受注可能になったその日に申し込みました。レスポンス力は当時のハリオのスケールより早く、何よりUSB充電式なので営業中に前触れなく電池が切れる心配がないというのが当時はとても魅力的でした。実際使い勝手、デザインともに優れていて、価格は少し高めですがスペックとして申し分ないです。

ハリオ コーヒースケール

ハリオ コーヒースケール ポラリス

定番型のスケールと抽出のガイドのついた最先鋭のモデルです。個人的には必要性を感じませんが、あれば便利な機能です。

キッチンスケール

キッチンスケールではコーヒーは淹れられないということは決してありません。ただ生活の一部としてコーヒーがある生活で、豆の量をきちんとgで計っている時点で十分に丁寧です。タイマーもキッチンタイマーでも携帯電話のタイマーでも計れます。

温度計

温度計は必要なのか。どちらかといえばあれば便利な部類です。抽出時の湯温は抽出結果に確かに影響を与えます。しかし大体の抽出に使う湯温は93℃~80℃の間です。例えばヤカンでお湯を沸騰させ、それをドリップポットに移せば90℃まで湯温は下がります。こういった工夫である程度の温度は作れるのでやはり温度計はあれば便利なアイテムです。抽出温度の違いで抽出結果は確かに異なります。しかしハンドドリップという行為の性質上コーヒー豆を煮出す訳ではないのです。必須アイテムとは言い難いです。

ケトル

デザイン・形状

ドリップ用のケトル=ドリップポットはここ数年でかなりバリエーションが増えました。さまざまな形状、材質に温度調節機能付きまで。結論からいうとケトルこそデザインで選べ、です。抽出する際に最も長く触れているものなので愛着も湧きやすいです。注ぎ口の形状によってコントロールのやい方は変わってきますが、ケトルの形状が変われば扱い方が変わるのは当然です。まず慣れているかどうかが最重要になります。少なくともドリップポットあるいはコーヒーケトルとして売られている物で、この形状だから細く注げない、というものはありません。

ただひとつ注意していただきたいのはコーヒーにお湯を注ぐための器具なので直接火にかけないで欲しいです。持ち手まで熱くなって火傷の可能性も出てきます。沸かしたてのお湯をドリップポットに移すことによって10℃前後温度が下がります。これだけで抽出に適した温度は作られるのです。

材質

ステンレス、琺瑯、銅が主流になります。おすすめと問われるとどれでもいいです。沸騰したてのお湯をケトルに移したとして抽出完了まで長く見積もって10分。その間に起こる保温能力による温度変化などたかがしれています。詳しくはニュートンの冷却の法則に。(お湯の自然冷却~ニュートンの冷却の法則による近似~

ちなみに保温性は琺瑯、ステンレス、銅製の順で高くなります。

温度調整機能付き

温度調整機能付き電気ケトルもここ数年でどんどん展開されています。こちらもあれば便利の部類です。epeiosや、ECORELAXなどデザイン性に優れたモノも多いですが比較的高額なので予算次第で購入を検討するのが良さそうです。

あとがき

さまざまなデザイン、機能を備えたアイテムが多数展開されています。ドリッパーの選び方と同じで自分がどういうシチュエーションでコーヒーを淹れるか。そのためにどういう機能が必要かを見極めた上で、やっぱり愛着の沸くデザインで選ぶべきだと考えています。私はヤカンから始まり月兎印、タカヒロ、epeios、kaico、ハリオミニと使ってきましたが、業務上の利便性を考えなければ、別にどれでもいいというのが率直な感想です。
新しい機能が付いたモノが発売されると、その機能が必要かのように謳われます。それがマーケティングなのですが。。コーヒーを始めようとしてその情報を得た人は思わず買ってしまうことでしょう。それが悪いことだとは言えませんが一般家庭、つまりホームバリスタへの参入障壁を上げるのがプロのバリスタの仕事でしょうか?1℃単位で温度を決めないと美味しいコーヒーにはなりませんか?お湯の温度を計って豆の温度、室温を考慮しないのは何故ですか?
いやらしい書き方をしましたがコーヒーをちゃんと淹れるということのポイントは別のところにあります。それについては別章で記述します。

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