カフェラテがぬるいと思ったことはありませんか?カフェラテはぬるい飲み物なのです。
ぬるい方が美味しいからなのですがその理由を説明していきます。
カフェラテとはコーヒー(エスプレッソ)にエスプレッソマシンのスチーム機能で空気を含ませながら温めたミルクを注いだものです。しかし、牛乳には加熱する限界があります。多くのバリスタが習うのは60℃~65℃の間でしょう。初めは温度計を使うかもしれませんがいずれは手の感覚だけで温度を測れるようになります。カフェラテが時折「ぬるい」と感じられるのには、科学的な要因が根拠としてあります。この事象を理解するには、エスプレッソやスチームミルクの温度管理、味覚の特性を総合的に考える必要があります。
カフェラテの作り方
- エスプレッソを抽出する(90~96℃)。
- 牛乳をスチームで加熱する(60~70℃)。
- スチームミルクをエスプレッソに注ぐ。
これにより、カフェラテの完成時の温度は約60~65℃に設定されることが一般的です。
- 風味の維持:牛乳の甘みが引き立ち、タンパク質が変性しすぎない温度帯。
- 飲みやすさ:65℃を超えると熱すぎて飲みにくくなり、やけどのリスクもあります。
- エスプレッソの抽出温度とのバランス:エスプレッソとスチームミルクを適切に混ぜ合わせることで、全体の風味が調和します。
しかし、この温度帯は一部の人にとって「ヌルい」と感じられる場合があります。
牛乳の加熱の限界
カフェラテに使用されるスチームミルクの温度コントロールはとても重要です。過度な加熱は牛乳の風味や口当たりを損います。
- 50~55℃:甘みが増すが、ややぬるく感じる。
- 60~70℃:最適な温度帯。甘みと飲みやすさのバランスが良い。
- 70℃以上:タンパク質が過度に変性し、風味が劣化する可能性がある。
牛乳を60~70℃に加熱すると、乳糖が変質し始め、甘みが引き立ちます。この範囲を超えると、焦げた風味が出ることがあります。
味覚の温度依存性
味覚は温度によって大きく影響を受けます。甘味、酸味、苦味、塩味はそれぞれ温度に応じて感じ方が変わるため、「ぬるい」と感じる原因の一つになります。
- 甘味の感じ方:
- 甘味は30~45℃で最も強く感じられるとされています。
- 60~70℃の飲み物では甘味がやや控えめに感じられる場合があります。
- 苦味の感じ方:
- 高温(70℃以上)になると苦味を強く感じることがあります。カフェラテが適温に調整される理由の一つです。
温度感覚の文化の違い
カフェラテの「ぬるさ」を感じる背景には、飲み物の温度に対する文化的な違いもあります。
- イタリアの基準:
- イタリアでは、カフェラテやカプチーノは飲みやすい温度で提供されるのが一般的です。
- 熱々ではなく、すぐに飲める温度(約60~65℃)が理想とされています。
- 日本の嗜好:
- 日本では熱々の飲み物を好む人が多く、60℃前後のカフェラテが「ぬるい」と感じられることがあります。
- 日本で受けの良いドリンクでもスイーツでも常温のものはなかなか無いと思います。我々日本人は熱いか冷たいものに、より商品価値を感じる文化が根付いています。
牛乳に含まれる乳糖というもの
牛乳を60~70℃に加熱した場合、乳糖そのものが分解されるわけではありませんが、温度効果や他の成分との相互作用によって甘みがより引き立つように感じます。
乳糖は二糖類であり、加熱そのものでは分解されず、化学構造には大きな変化は起きません。しかし、温度の影響で次のような要因が関係し、甘みを感じる度合いが増すように思われます。
溶解度の増加
温度が上がると乳糖の溶解度が増し、液体中に均一に分布します。これにより、舌で感じる乳糖の濃度が均一化し、甘みをより強く感じることがあります。
甘味の感覚温度
人間の味覚は温度によって甘みを感じる感度が変化します。60~70℃の範囲は甘味を感じやすい温度帯であり、冷たい牛乳よりも加熱した牛乳の方が甘く感じます。
タンパク質との相互作用
牛乳にはカゼインや乳清タンパク質が含まれています。60~70℃の加熱により以下の現象が起き、風味や質感が影響を受けます。
乳タンパク質の熱変性
タンパク質が熱によってわずかに構造変化を起こします。この変化により乳糖がタンパク質表面と相互作用し、甘味の感じ方や風味が変わることがあります。
メイラード反応の前段階
乳糖とアミノ酸(タンパク質の構成成分)の間で、わずかにメイラード反応が始まりかけます。この段階ではまだ褐色化は起きませんが、風味に微妙な変化が生じます。
加熱時の揮発性成分の発生
加熱により牛乳中の微量成分が揮発し、風味が影響を受けます。
乳脂肪の溶解
温度上昇によって乳脂肪がより均一に溶け込み、口当たりが滑らかになります。これにより全体的な甘味のバランスが良くなると感じます。
揮発性化合物の変化
牛乳に含まれる微量の揮発性成分(脂肪酸、アルデヒド類など)が熱で変化し、甘い香りを引き立てることがあります。
変質と言っても「ほんのり」の範疇を出ません。しかし繊細なコーヒーの風味とその「ほんのり」さが複雑に絡み合うことでカフェラテ特有の芳醇な香りを作り出すのです。カップの温まっていないカフェラテはバリスタの怠慢の可能性もありますが、プロの手によって適切に温められたミルクの甘味をゆっくりと感じ取ってみてはいかがでしょうか。