フェアトレードとスペシャルティコーヒーのはなし

目次

フェアトレード

フェアトレードは、発展途上国の生産者や労働者が公正な価格で取引される環境を作り出し、持続可能な生活を支援する国際的な取り組みです。この仕組みは、経済的な不平等や搾取を是正することを目的とし、農産物や手工芸品を適正価格で購入することで、生産者の生活の質を向上・安定させることを目指しています。

コーヒーは赤道付近で栽培されます。生産国の多くは発展途上国です。かつては「搾取」と名ずるに相応しい不相応な取引が行われていました。では現代ではその現状はどうなっているのでしょう。


フェアトレードの起源

フェアトレードの取り組みは、第二次世界大戦後の1940年代~1950年代に始まりました。当初は、発展途上国の貧困問題を解決するために、手工芸品や農産物を適正価格で購入・販売する活動が中心でした。

• 1946年、アメリカのメノナイト中央委員会(MCC)が「Ten Thousand Villages」を設立。途上国の手工芸品をアメリカで販売し、生産者を支援しました。

• 1950年代には、オランダで「S.O.S. Wereldhandel(現在のFair Trade Original)」が設立され、フェアトレードの概念がヨーロッパでも広がりました。

フェアトレードの拡大

1960年代~1970年代にかけて、フェアトレード運動はより広範囲な社会的意識の高まりとともに拡大しました

援助ではなく貿易を」というスローガンが掲げられ、途上国との対等な貿易関係が目指されるようになりました。

対象商品の拡大:

手工芸品に加え、コーヒーや紅茶などの日常的な農産物も対象となり、フェアトレードの市場が広がりました。

この時期、特にヨーロッパやアメリカで「フェアトレードショップ」が開設され、フェアトレード商品の販売が増加しました。


認証制度


1988年、オランダで世界初のフェアトレード認証プログラム「Max Havelaar」が誕生しました。この認証制度により、フェアトレード商品が消費者にとって簡単に識別可能になり、フェアトレード市場がさらに拡大しました。

1997年には、世界各地のフェアトレード団体が統一基準を求めてFairtrade Labelling Organizations International(FLO)(現在のFairtrade International)を設立しました。この統一により、以下のような進展がありました。

基準の標準化: 各国で異なっていた認証基準が統一され、グローバル市場での認知度が向上。

対象商品の増加: コーヒー、紅茶、カカオ、バナナ、綿花、ワインなど、多様な商品が認証対象に。

これにより、フェアトレード商品がスーパーマーケットやオンライン市場で広く購入可能になりました。


フェアトレードの仕組み

1. 適正価格の保証:・・・生産者に市場価格の変動に関係なく、生活可能な最低価格を保証する。

2. フェアトレードプレミアム:・・・取引ごとに追加で支払われる資金。教育やインフラ整備、地域の発展に使われる。

3. 環境保護:・・・持続可能な農業方法を推奨し、環境への配慮を義務付ける。

4. 労働基準の遵守:・・・児童労働や搾取を防ぎ、安全で公正な労働環境を保証する。

スペシャルティコーヒー


スペシャルティコーヒーとは、品質が高く、独自の風味を持つコーヒーのことを指します。生産者にとっては、従来のコモディティコーヒーとは異なり、品質や持続可能性に焦点を当てた生産プロセスが求められます。


スペシャルティコーヒーの基準


スペシャルティコーヒーは、国際的な基準で品質が評価され、次の要件を満たす必要があります。

•カッピングスコア 国際的な評価基準であるSCA(スペシャルティコーヒー協会)によって、100点満点中80点以上を獲得。

• 欠点の少なさ 1ロット(300g)中に重大な欠点(カビや異物など)がほぼないこと。

• 風味の特長 生産地の土壌や気候条件(テロワール)を反映した、独特のフレーバープロファイルを持つ。


生産者にとってのスペシャルティコーヒーの意義

(1) 高価格での取引が可能

スペシャルティコーヒーは品質に基づいて価格が決まり、通常のコモディティコーヒー(一般的な大量生産品)よりも高価格で取引されます。つまり、生産者は収益を増やし、生活水準を向上できるのです。

(2) 生産技術の向上

高品質なコーヒーを生産するため、生産者は栽培技術や加工技術(精製方法)の向上に取り組みます。

(3) 地域ブランドの確立

コーヒー豆の個性は生産地の条件(標高、土壌、気候)に左右されるため、生産者や地域のブランド力が向上します。さらに生産地の名前が消費者に認知されることで、他の農家との差別化が図られます。

コーヒーとフェアトレード

フェアトレード認証は当然にコーヒーにもあります。ただ、それだけでなく大きな動きを牽引したのはスペシャルティの認定です。スペシャルティの認定を受けたコーヒーは高額で取引されます。COE(カップオブエクセレンス)上位入賞者には高額の収入があります。もちろん、並大抵の努力では得られない結果でしょう。COE1位2位ともなればオークション形式になり落札するのに莫大な金額が必要です。活発な多くの農園はすでにダイレクトトレード以上の取引になっていることが現状です。「スペシャルティコーヒー専門店」になんだか敷居の高さを感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、スペシャルティコーヒーを消費すること自体が生産者への積極的な還元になっています。(中間業者はいますが)

フェアトレードは、発展途上国の生産者を支援し、持続可能な経済と社会を築く重要な取り組みです。1940年代から始まった活動は、認証制度の確立や対象商品の拡大を経て、現在では持続可能性や透明性を追求する新たなモデルと共存しています。これからも、経済的不平等の解消と環境保護を両立するための重要な枠組みとして進化し続けるでしょう。

目次