コンビニのコーヒーなどで「アラビカ種」という表記をみたことはありませんか?さも高級品種のような伝え方は流石のマーケティング力ですが、ここでは「コーヒーの品種」とは何なのかというところを見ていきましょう。コーヒー豆の銘柄にあるアラビカ種やゲイシャという銘柄について解説します。
コーヒーの品種に一番詳しいのは焙煎士です。焙煎士はその豆について徹底的に分析、そして、理解し焙煎に臨むので情報が必要不可欠なのです。バリスタはその情報を客様にどう伝えるかを考えることが使命だと思っています。
品種に関することは非常に情報量の多い分野です。が、提供側はしっかりと把握し商品の精製のコントロールのベースとなる基本情報です。
いずれは購入側も「この品種が好き」と声があがる時代が来るかもしれませんね。その頃にはコーヒーは今より遥かに高価なものとなっているのではと思います。
2大品種
「アラビカ種」とよく対を為して用いられるのが「ロブスタ種」です。違いは下にまとめますが、そもそも私たちが普段口にする冷蔵保存されている製品でないコーヒー、淹れられたコーヒーはほぼ100%アラビカ種です。ではロブスタ種とはなんなのでしょうか。
ロブスタ種
・利用用途と特徴
まず、インスタントコーヒー、缶コーヒーの原料です。苦味が強く、酸味が少なく、土のような風味(ゴムの香りとも表現されることも)、チョコレートやナッツのようなアフターが出ることもあります。
・産地と生育
原産国はアフリカ、コンゴ(と言われています)。現在ではベトナムが最大のロブスタ生産国となっています。また高温多湿な気候に適応し標高200~800mの低地でも成長可能です。最大の特徴は病気や害虫に対してアラビカ種より遥かに強い耐性を持つことです。ゆえに生産コストも低く、工業的な材料としての需要が強いのです。
ロブスタ種はカフェイン含有量(約2倍)も多く、ネガティブな印象があるかもしれませんが、エスプレッソにすると濃厚なクレマを生み出すので、特にクラシックなイタリアンエスプレッソには欠かせない要素なのです。さらに近年では高品質でユニークな改良品種も登場しています。
アラビカ種
・利用用途と特徴
ざっくりカフェで飲まれる品種です。スペシャルティコーヒー。酸味、甘みを持ち、果実や花のような華々しさなど様々な香りがあります。
・産地と育成
原産国はエチオピア(と言われています)。現在ではコーヒーベルト(赤道を中心に北緯25度南緯25度)の多くの国で栽培されています。気温変化や病気に弱く、過去そして今も品種改良が続けられて今の流通量が確保されています。
アラビカ種は生産コストもかかりますが、その分高価で取引されます。広大な敷地の中膨大な量のロブスタ種を栽培、収穫するより、より高品質なアラビカ種を適切な範囲で管理しながら育成した方が、労働コストを考えると良いのでしょう。
品種というもの(ゲイシャ?)
実はロブスタ種というのは「カフェネラ種」の一種です。本来アラビカ種と対を為すのはカフェネラ種なのです。コーヒーも当然植物ですので改良のたびに品種が分岐していきます。
「ゲイシャ」という名を耳にしたことはありませんか?「ゲイシャ種」はアラビカ種の派生です。エチオピア南西部のゲシャ村(Gesha)周辺で、1930年代、イギリスの植物学者たちが発見しました。1950年代、パナマの農業研究機関に種子が持ち込まれ、ボケテ(Boquete)地域のエスメラルダ農園(Hacienda La Esmeralda)で栽培が開始されました。この地域の高地と独特の気候が、ゲイシャ種の潜在的な品質を引き出しました。
2004年、パナマで開催された「ベスト・オブ・パナマ(Best of Panama)」コーヒー品評会で、エスメラルダ農園のゲイシャ種が出品されたところ、フローラルでジャスミンのような香り、ベルガモットや紅茶を思わせる独特の風味が審査員たちを驚かせ、最高得点を獲得しました。この出来事を契機に、ゲイシャ種は世界中で注目されるようになり、スペシャルティコーヒー市場での価格が急騰しました。ゲイシャ種というのは今や、コーヒーの歴史や栽培技術、消費者の味覚の進化を象徴する存在なのです。
アラビカ種の主な品種
原型種
- ティピカ(Typica)
アラビカ種の原型で、甘く繊細な風味が特徴。多くの品種の祖先。 - ブルボン(Bourbon)
ティピカから派生。甘味と酸味が強く、フルーティーな風味が魅力。
派生品種
- カトゥーラ(Caturra)
ブルボンから突然変異で生まれた品種。収量が多く、酸味が際立つ。 - カトゥアイ(Catuai)
カトゥーラとムンドノーボの交配種。耐風性が高く、安定した収量を持つ。 - ムンドノーボ(Mundo Novo)
ティピカとブルボンの自然交配種。高収量で耐病性が高い。 - SL28
ケニアで育成された品種。耐干性があり、ブラックカラントのような明るい酸味。 - SL34
ケニア原産で、雨の多い地域に適応。リッチでフルボディな風味。 - パカマラ(Pacamara)
パカス(Pacas)とマラゴジッペ(Maragogipe)の交配種。大粒でユニークな風味。 - ケント(Kent)
インドで開発された品種。病害耐性があり、まろやかな味わい。
希少種
- ゲイシャ(Geisha/Gesha)
エチオピア原産の希少品種。ジャスミンの香りやベルガモットのような柑橘系の風味で、特にパナマ産が有名。 - マラゴジッペ(Maragogipe)
ティピカの突然変異種で、豆が非常に大きい。風味はやや穏やかでクリーミー。 - ビジャサルチ(Villa Sarchi)
コスタリカで発見されたブルボンの突然変異種。フルーティーで明るい酸味。 - イエローブルボン(Yellow Bourbon)
ブルボンの突然変異種。黄色いチェリーが特徴で、甘味が強い。 - ロリーナ(Laurina)
ティピカの亜種で、カフェイン含有量が少ない(デカフェに近い自然種)。 - エチオピア原生種(Heirloom Varieties)
エチオピアの自然交配や原生種群。地域ごとに異なる複雑なフレーバーを持つ。 - モカ(Mokha/Mocha)
イエメン原産の品種。小粒で濃厚なチョコレートのような風味が特徴。
新しい交配種
- カティモール(Catimor)
カトゥーラとロブスタ系ハイブリッドの交配種。耐病性が高く、収量も多い。 - ロイヤルセレクション(Ruiru 11)
ケニアで開発された品種。耐病性と明るい酸味が特徴。 - センティネラ(Centinela)
コスタリカで開発された新品種。持続可能性と収量の高さで注目。