まず、コーヒー豆の保存はコーヒー豆への理解が試されます。その性質と飲み手の許容範囲に左右される問題です。おすすめの保存を問われても豆の状態で購入し200gを2週間程度で消費する人には、正直なところ、不要の課題にも思えるのです。一方で、前章で焙煎後の鮮度について言及しましたが、人によってはより焙煎日に近い状態が好みの方もいらっしゃるでしょう。そういった方は保存に注意を払う必要は確かにあると理解はしています。そういった飲み手の事情が大いに影響するので、保存方法の最適解にもエゴが介在して然るべきなのです。
なぜ保存に気を遣う必要があるのか。コーヒー豆の性質について
- 1.コーヒー豆は呼吸している
- 2.コーヒー豆は酸化する
- 3.エイジング
1.コーヒーショップで売られているコーヒー豆の袋がパンパンに膨れ上がったものを見かけたことはあるでしょうか。コーヒー豆には炭酸ガスが含まれており豆の状態であっても常に放出されています。コーヒーの繊維は多孔質といい微小な空洞がいくつも空いています。その穴からガスが放出され、また周囲の匂いを吸着しやすいのです。保存にあたりまず密閉が主張されるのはこの為です。
2.深煎りのコーヒーではしばしば豆の表面が光っているものを見ることがあります。コーヒーには油質(コーヒーオイル)が含まれていてそれが表面に滲み出てきている状態です。滲み出ているか否かにかかわらず植物性油は含まれており、オリーブオイルがそうであるように酸化しやい性質を持っています。時間経過は当然に影響しますが、空気・光・熱によって酸化は進みます。また多孔質でありガスの放出を続けていることから、ただ静かに佇んでいるコーヒー豆でも微少で緩やかに周囲の空気を流動させ、酸化は促されています。
3.エイジングとは焙煎後の経過期間を指します。焙煎度合い、コーヒー豆の個性によって最適なエイジングは異なります。抽出方法はそのエイジングに対応する手段として使い分けることもできます。例えばエイジングが浅い状態ならばフレンチプレス、逆にエイジングの深い豆はエスプレッソで最大のポテンシャルを発揮します。このエイジングを進めるためには先に述べた、呼吸を妨げないことが重要です。適度なガスの放出はコーヒーのポテンシャルを引き出すつまり飲み頃に達するには必要な工程なのです。

対処
呼吸とエイジングを止めるには密閉することで対処します。空気の流動を止めることが目的です。
酸化を止めるには密閉した状態で冷凍庫で保存します。ただコーヒー豆も焙煎度合いによりますが微量ながらも水分を含んでいます。冷凍温度次第では、そのままでは抽出結果に影響を及ぼす場合があります。抽出器具をしっかり温めたり豆自体を復温したりといった対処があった方がいい場合もあります。

あとがき
密閉保存については実は1700年代から推奨されています。2050年現在コーヒー豆の品質はどんどん良くなっています。が、コーヒーがコーヒーである以上性質は変わりません。保存に気を遣わないというスタイルも大いに結構です。飲み手の生活スタイルによってコーヒーの様式が変化することは文化としてとても自然なことです。
性質について説明してきましたが豆の状態と挽いた粉の状態では表面積が何十倍何百倍と違うので変質する速度が段違いなのも併せて知っておいていただければと思います。


